悲願の二冠を達成!
今季、トップリーグ最強のチームになった理由とは-。北川智規Tomoki Kitagawa
ゲームキャプテンとして日本選手権決勝に出場した北川智規。攻守にわたりベテランの技が光った
写真=野本浩一郎/パナソニック ワイルドナイツ<2>から続く
リーグ一のディフェンスのチーム
今季は戦い方に一本芯が通ったことで
迷いがなくなった
――シーズンを振り返ってきつかったなと思う試合はどれですか。「(セカンドステージの)サントリー戦はしんどかったですね。いつもはタックル回数が100のところ、あの試合は300ぐらいいったんです。いつもの倍以上はタックルしているので、たぶん後半最後は点を挙げられませんでした」
――近年、ずっと勝てなかった相手に、今季は全勝しましたね。「ディフェンスがカギになりましたね」
――今季、手応えを感じたのはいつぐらいからですか。「後半節ですね。そこから、完成に近づいていった。春からやって来たものを積み重ねて、プレシーズン、夏合宿とやっていって、シーズンで完成していない証拠にファーストステージでキヤノンに負けたりして。(11月の)宮崎合宿で寝食をみんなで共にしたことで、夜の時間にいろいろとコミュニケーションを取れたことも良かったし、より実践に近い練習が午前午後とできたので、そういうところでも自信が持てたのだと思います」
――日本選手権準決勝の神戸製鋼戦では、2トライを挙げましたね。「しましたっけ? 覚えてないです(笑)」
――トップリーグのセカンドステージの神戸製鋼戦では、32-31と接戦でしたが、日本選手権では46‐5と大差で勝ちました。「相手は点差が開いた時に、トーナメントなのでポイントを獲りにいく戦い方じゃなくて、点を獲りにいく戦い方にせざるを得ない状況だったんです。相手がちょっと無理をしたところに僕らが付け込んでいった。『相手はミスを誘ってきたり、パスを回してくるしかないぞ』ということで、こちらはディフェンスラインの人数を増やしたりして対応した結果が、あの点差になりました」
――今季は選手たちが、周りの状況が見えるほど冷静にプレーしているんだろうなと思いました。「コミュニケーションの部分が良くなったからですね。外からの声が大事で、外側からウイング、フルバック陣がワイワイ言っていても聞こえないので、それを内側に伝えるためにセンターやスタンドがフォワードに伝えたりしていました。フォワードはどうしてもしんどいことをするポジションで、激しいし、痛いしで、一つのプレーが終わるとボールウォッチャーになってしまいがちなんです。ボールを見るんじゃなくて、人を見ろというのをディフェンスの中でやってきたので、『前見ろ! 前見ろ!』『人数を合わせろ』と声もかけるし、プレーが始まる前にも『もしこいつがここおったら、残っといてな』というのも先読みしてコミュニケーションを取ったりしていました。今季はいろいろ考えてコミュニケーションができましたね」
――これまではコミュニケーションの部分に課題がありましたが、今季そこを改善できたのはなぜだったのですか。「みんなの意識ですね。言うのは全部言うんですけど、聞く耳をもつのが難しい。みんなカッとなってしまうので。耳を傾けられるようになったのはフィットネスがあるからです。しんどすぎても聞こえてこないですから。それにある程度プレーに余裕があったり、数的に余裕がある状況なら耳に入ってくるので、どういう風にそういう状況を作っていくのかと言ったら、声しかないんです」
――シーズンの初めは正直、二冠を獲れると思っていましたか。「正直、いける力はあると思ったんですけど、絶対に獲れるかと言ったら五分五分ぐらいかなというのはありましたね」
――パナソニックにチーム名を変えてから過去2シーズンはノータイトルに終わり、苦しいシーズンを過ごしただけに、3年目の今季の二冠達成は、喜びも一入(ひとしお)だったのではないですか。「騒ぎましたね。『やったぞ』って。笑顔でシーズンを終えられたのが14チーム中、僕らだけなので」
――これまでも二冠を狙っていましたが、今季はどこが違いましたか。「ディフェンスに自信が持てたことですね。これまでは、どうすれば勝てるというのがない2年間やったと思うんです。どうすれば勝てる、これさえすれば勝てるというのがなかった。一本芯が通ってないチームやった。今年は一本ディフェンスというのがバックボーンにあって、そこからのターンオーバーボールをどうするとか、ディフェンスありきのチームやったと思います。それが昨季は戦い方にぶれた部分もあったので難しかったですね」
――来季はどうチームを進化させていきますか。「このディフェンスに満足したら終わると思う。決勝、準決勝での反省もいっぱい出てきているので、それはまだまだ自分たちの伸びしろがあるということ。ディフェンスの形を変えていかんと相手に研究されるので、その中で『あの時はああやったから』というこだわりは持たず、自分たちでしっくりくる、効果が出るものを、上積みしてやっていきたいですね。それができればもっと強いチームになれる」
(文=星野志保)
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